私たちは果菜類のどこを食べているの?

 トマトキュウリなどの果菜類は、食事どきのおかずとしてだけでなく、スイカメロンイチゴなど、おやつやデザートとしても食べます。種類も多く、食べ方も色彩も形もさまざまで、野菜の中で生産高が最も多く、好んで食べられているグループです。でも、種類によって食べている箇所は違うようですね。一体、果実のどこを食べているのか、詳しく調べてみましょう。
 野菜の種類はいくつ? のページでは、果菜類を次のように分けました。
名前 食べる部分              野菜の種類 (野菜名)
果菜類 未熟な果実  キュウリ・ナス・ピーマン・サヤエンドウ・サヤインゲン・ササゲ・オクラ
完熟果実  スイカ・メロン・シロウリ・カボチャ・トマト・トウガラシ・完熟ピーマン・イチゴ
未熟なタネ  実エンドウ・ソラマメ・エダマメ・スイートコーン
完熟したタネ  インゲンマメ・アズキ・リョクトウ・完熟ソラマメ・ポップコーン
 未熟な果実とか完熟果実といっても、果実全体を食べるとは限りません。果実全体を食べるものもありますし、果実の一部分を食べているものもあります。まず果菜類の果実の姿をよく見てみましょう
トマト果実の縦切り図

トマトの花
 左の絵はトマトの果実です。果実を構成している部分を絵の中に記入しました。果実の構成部分はまず外側の果皮(かひ)と内部の胎座(たいざ)とに分かれます。

 果皮のうち、外側の
外果皮(がいかひ)は硬くて内部を保護する役目をしています。中果皮(ちゅうかひ)は厚みのあるやわらかい組織です。果皮の内側を内果皮(ないかひ)といいます。

 果実の中心部とその周りを
胎座といい、この組織の表面にタネが着いています。胎座増生部(たいざぞうせいぶ)とは果実の発育中に胎座の外側にできてくる組織で、トマトではゼリー状ですが、内果皮とくっついてしまっています。トマトを食べるときは、普通の場合タネも含めて外果皮から胎座の中心まで全部の組織を食べています。

 
ナスの花   ナスの花の縦切り図
 このトマトの果実は、トマトの花のめしべ子房(しぼう)が大きく発育してできたものです。トマトのめしべの子房は花の中に隠れていて見えません。ナスでもめしべの子房は花の中に隠れています。この花を縦に切った図で見てみましょう。

 めしべは子房と花柱(かちゅう)と柱頭(ちゅうとう)とからできています。おしべから出た多くの花粉(かふん)が柱頭に着くと、花粉の粒はそれぞれ管を出して花柱を通り、子房まで延びて子房の中の胚珠(はいしゅ)と受精します。1000個以上もある胚珠の多くが受精すると、胚珠はタネになるための発育を始めます。この刺激を受けて、子房全体も大きくなって果実へと発育して行きます。胎座と果皮との間には、はじめわずかなすき間がありますが、果実の発育中に胎座増生部によって埋められて境い目がはっきりしなくなります



 
カボチャ 金糸瓜  
 
スイカ 完熟ピーマン()  
       
 ほかの野菜ではどうでしょうか。

 未熟な果実を食べる種類のうち、キュウリナスサヤエンドウサヤインゲンオクラなども果実全体を食べています。ところが、完熟果実を食べる種類はトマトのように果実全体を食べるものは少ないのです。

 スイカは増生部の加わった胎座部分を食べます。これに対してメロンは厚みのある中果皮と内果皮を食べます。カボチャは果皮全体が食べられますが、カボチャのなかには金糸瓜(きんしうり)のように繊維状になった胎座部分を食べる変わり者もあります。

 ピーマンと豆類は胎座増生部が発達しないので、果実の内果皮と胎座の間にすき間があります。とくにピーマンでは果実が大きくなるにつれてこのすき間が大きくなって空洞ができます。ピーマンの食べるところは果皮で、内果皮の細胞は特別に大きいので、肉眼で細胞(さいぼう)の一つ一つが見られます。内部の空洞があるおかげでピーマンは輸送中の荷傷みが少なく、遠距離輸送に適した野菜になっています。



 数多い果菜類のなかで、イチゴだけは変わっています。

イチゴの花 イチゴの花の縦切り図 イチゴの実の縦切り図


イチゴ
 イチゴの花の断面を見てみましょう。ほかの種類の花では花床(かしょう)はごく小さいのに、イチゴでは花床が大きく盛り上がっていて、その上にたくさんのめしべが着いています。下の方には、花床をとり巻いておしべが着いています。めしべの基部の小さい子房には、胚珠が1個だけ入っています。

 おしべの花粉がめしべに着いて受精すると、花床が大きく発育し始め、うす緑色から熟すると赤色になります。花床の組織の外側は皮層(ひそう)、内部は髄(ずい)です。めしべの子房は小さく硬く熟して、大きくなった花床の表面に半ばうずまったような姿で点々と貼りついています。植物学上はこれが本当の果実で、硬く小さくやせているので痩果(そうか)といいます。ひとつの痩果の中にはタネが1個入っています。この痩果を表面にのせた花床の成熟組織全体が果物としてのイチゴです。つまり、私たちが食べているイチゴ果実の大部分は、子房が大きくなったものではなく、花床の組織が大きく発育したものです。

 このように、イチゴの果実はほかの果菜類の果実とはずいぶん違った構造になっています。花床が発育して果物として熟するのは、リンゴやナシなどの果樹の果実とよく似ています。そのほかにもイチゴという植物は、多年生であること、株に休眠現象があることなど、ほかの一年草の果菜類とは著しく違った性質を持っています。

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